こんにちは。奈良のJR王寺駅からすぐの桐山法律事務所の弁護士・桐山修一です。
このブログでは、見落としがちな法律や制度についての記事をアップしていきます。
頭の隅でご記憶いただき、いつか問題に直面したときに「そういえばこんな話をきいたことがあったな」と思い出してもらえれば嬉しいです。
自分は相続税を納付したのに「連帯納付義務」に基づき、他の相続人の未納の相続税を支払うよう税務署から督促状が届くことがあります。連帯納付義務とは何なのか、従わないとどうなるのか、対策はあるのかといったことをお話していきます。
「相続税の連帯納付義務」とは
相続人は、自分が支払うべき相続税を納付しただけでは、納税の義務を果たしたとは言えません。すべての相続人が同様に自分が納めるべき相続税の納付を行い、被相続人の遺産総額に基づいて計算された相続税の総額を満たした場合に限り、納付義務を果たしたことになります。
つまり、1人でも相続税を納税していなかったり、少しでも不足してしまうと、納税の義務は残りますし、国からは納付を求められ続けます。
簡単にいえば、相続税の未納は相続人同士の連帯責任ですよということです。
督促を無視していると、財産が差し押さえられる
連帯納付義務の発生は、普通に考えると、きちんと相続税を納めた相続人にとってとんだとばっちりです。しかし、過去の判例などを見ても、その相続人の不服申し立ては基本的に認められません。
督促を無視していると、税務署は財産の差し押さえを行います。通常はまず未納である相続人の財産を差し押さえますが、その相続人が換価性の高い財産を持たない場合には、自分の分をきちんと納めた相続人の財産が先に差し押さえられることもあります。
無制限に納付義務が生じるわけではない
連帯納付義務に基づき他の相続人の未納分の相続税納付を求められたとき、その相続人は本人の代わりに納付をしなければなりません。
ただし、相続した財産から納付済の相続税を差し引いた額を超えて、連帯納付義務を負う必要はありません。
例えば、親から1,000万円を相続してすでに100万円の相続税を支払ったA、1億円を相続したけれど1,500万円の相続税が全く支払えないBという兄弟がいたとします。Aは連帯納付義務を負いますが、「相続した財産1,000万円」から「すでに支払った相続税100万円」を差し引いた900万円を超えて納付する義務はない、ということになります。
遺産分割での取り計らい、相続放棄などの対策が考えられる
相続税をきちんと納めることが難しそうな相続人、事業や遊びなどに相続財産を使い込んでしまいそうな相続人がいる場合には、遺産分割協議であえて換価性の低い不動産などではなく預貯金を相続してもらい、かつ納税用の金銭を予め預かっておく、という方法があります。
ただ、当然ながらこちらが一方的に決められることではありませんので、納税の意志をしっかりと確認しておく、期限までの納付を呼びかけるといった、強制力のない働きかけも行わざるを得ないというのが実際のところです。
あるいは、相続放棄という方法もあります。相続放棄は「そもそも相続人ではなかった」という形になりますので、相続税の連帯納付義務を課せられることはありません。
連帯納付義務の制度には、批判も少なくありません。しかし、現状こういった制度がある以上、できることをしっかりと押さえていくしかありません。
お金にルーズなきょうだい・家族・相続人となり得る人がいて相続が不安、遺産分割協議で何とか連帯納付義務の発生のリスクを削減したい、督促状が来てどうしたらいいのか分からないというときには、奈良のJR王寺駅からすぐの桐山法律事務所へご相談ください。
ご依頼者様お一人お一人に合った、包括的なサポートをさせていただきます。