こんにちは。奈良のJR王寺駅からすぐの桐山法律事務所の弁護士・桐山修一です。
このコラムでは、見落としがちな法律や制度についての記事をアップしていきます。
頭の隅でご記憶いただき、いつか問題に直面したときに「そういえばこんな話をきいたことがあったな」と思い出してもらえれば嬉しいです。
本日は、「相続税」についてのお話です。相続性とは、一定以上の財産を相続するときに発生し、相続人による申告・納付が義務付けられている税金です。控除を活用した節税についてもご紹介します。
まずは「正味の遺産額」を把握
預貯金、現金、車、不動産、株式、絵画、時計、宝石などの相続する財産を評価し、合算したものが「遺産総額」です。そして、遺産総額から負債と葬儀にかかった費用を引いたものが、「正味の遺産額」です。
なお、生命保険金、死亡保険金はこれらに含まれますが、「500万円×法定相続人の数」に収まる場合には非課税となり、相続税の課税対象にはなりません。
「正味の遺産額」から「基礎控除額」を差し引いたものが「課税遺産総額」
「基礎控除額」とは、いうなればどんな場合にも適用される控除のことを指します。遺産の額にかかわらず「3000万円+法定相続人の数×600万円」と定められています。
前の項目で説明した「正味の遺産額」から「基礎控除額」を差し引いたものが「課税遺産総額」となります。
ここまでの計算自体は、それほど難しいものではありませんね。
相続税額の算出は、少し複雑
一人ひとりの相続税額の前に、まずは「相続税の総額」を算出する必要があります。「相続税の総額」は、相続人の法定相続分に応じた税率を掛け、さらに控除額を差し引いた額を合計したものです。
たとえば課税遺産総額が3600万円で、妻1人と子2人が相続する場合、配偶者の法定相続分が1800万円、子の法定相続分が1人あたり900万円となりますので、下記の税率・控除額表(※)を参考に計算すると、
・妻 1800万円×0.15(15%)-50万円=220万円
・子 900万円×0.1(10%)=90万円
となり、220万円と180万円(子2人分)を合計した400万円が「相続税の総額」です。
そしてこの400万円を、それぞれの実際の相続分に応じて分配します。妻が遺産の4分の3を相続したのなら400万円×4分の3=300万円が、子が遺産の8分の1ずつ相続したのなら400×8分の1=50万円が、それぞれの相続税額となります。
※税率・控除額表
課税価格 | 税率 | 控除額 |
1,000万円以下 | 10% | なし |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
さまざまな控除制度を活用した節税
相続人ごとの相続税額が出たのでこれで終わり、ではありません。さまざまな控除制度があるので、うまく活用し、節税しましょう。
配偶者の法定相続分もしくは1億6000万円のいずれか高い方の額が非課税となる「配偶者控除」、未成年の子が20歳になるまでの年数×10万円が控除される「未成年者控除」、被相続人の死亡までの3年間以前に行われた贈与が控除される「贈与税額控除」、さらには「障害者控除」「相次相続控除」といったものもあります。
ご紹介したように、途中の計算については、それほど難しいものではありません。しかし、遺産総額の把握や、控除制度の適用については、専門知識や経験が必要です。財産を評価する際にはその専門知識が欠かせませんし、控除が適用されるか否かは細かな条件に当てはまるかどうかで決まります。
相続のトラブルは弁護士に、相続税は税理士さんに――と各専門家にそれぞれ相談する方法もありますが、当事務所にご相談いただければ、不動産の評価などを含め、ワンストップでのご対応が可能です。相続問題や相続税にかかわるお悩みごとがございましたら、奈良のJR王寺駅からすぐの桐山法律事務所へご相談ください。